はじめに
保険診療で、ピロリ菌の診断・治療ができます。
- ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こすことが確認されていますが、ほとんどの人は症状を自覚しません。
- ピロリ菌の感染による炎症が続くと、感染部位が広がってヘリコバクターピロリ感染胃炎になります。長い期間炎症が続くと、胃粘膜が萎縮した状態になります。さらに進むと、一部の患者様では、胃がんになることも報告されています。
- 胃・十二指腸潰瘍の患者様は、ピロリ菌に感染していることが多く、潰瘍の発症ならびに再発に関係していることがわかっています。
除菌治療の目的
除菌治療によって胃がんの発生を減らすことが第一の目的です。また、潰瘍の再発予防、その他ピロリ菌が原因となる病気の治療も可能で、胃症状が改善する場合もあります。
診断
保険診療では、原則として胃カメラとピロリ菌検査をいっしょに行うことが必要です。まず、胃カメラで胃がんの有無や胃炎の程度を確認し、ついでピロリ菌検査で感染の有無を診断します。
当院では、「尿素呼気試験」を実施しています。この検査は、簡便で患者様の負担が軽く、感度が高いのが特徴です。ただし、尿素呼気試験が実施できない患者様には、抗体や便中抗原測定を行っています。
尿素呼気試験:
検査用のお薬を飲み、飲む前と、飲んだ後の呼気を調べて、ピロリ菌の存在を判定します。検査に約30分かかります。
治療法
最初の治療薬(1次除菌)は次の通りです。現時点での成功率は約90%といわれています。
を1日2回、朝・夕食後に、1週間服用します。
- この治療法では主治医の指示どおりに正しく内服を続けることが重要です。
- 喫煙は除菌効果を低下させるという報告があります。
- 副作用として軟便、下痢などの消化器症状や味覚異常、アレルギーなどを起こすことがあります。気になる症状がある場合は、勝手に内服を中止しないで、必ず主治医に相談して下さい。
1次除菌が不成功だった場合、やはり保険診療で別の薬の組み合わせによる治療薬(2次除菌)を使います。成功率は80〜90%です。
を1日2回、朝・夕食後に、1週間服用します。
- 副作用は1次除菌と同程度ですが、除菌期間中は、飲酒はできません。
多くの方は保険診療で行う1次、2次除菌で除菌できますが、除菌ができない方もおられます。これらの方には胃がん検診もかねて、定期的な胃カメラをお勧めします。しかし、年齢や内視鏡所見によっては、3次除菌をお勧めする場合があります。3次除菌は保険適応外の自費診療となりますので、別途説明させていただきます。
除菌判定
除菌治療終了後、しばらく期間をあけて(主治医が指示します)尿素呼気試験などを行い、除菌の成否を判定します。
除菌後の定期検査(胃カメラ)
除菌成功後も、胃炎改善の確認と胃がん検診を兼ねて定期的な胃カメラ(通常は年1回程度)が必要です。除菌により胃がんの発生率は1/4〜1/3になるといわれていますが、ゼロにはなりません。不幸にして除菌後に胃がんが発生しても、定期検診で早期発見ができれば、内視鏡的切除(ESD)など負担の少ない治療も可能となります。
診断と治療、除菌後胃カメラの流れ
2018年4月1日
夏田 康則